5 O 'Clock from to 7 O 'Clock Cleo [Blu-ray]
H**N
実験的で女性らしい繊細さに溢れた作品だが、モノクロのパリの街並みも魅力的だ。
アニエス・ヴァルダと言ったら、まずは「幸福」である。でも、処女作である「5時から7時までのクレオ」も中々にムードある作品だと久しぶりに再見して思った。映画の上映時間の流れと同じ流れで主人公の2時間のドラマが展開する。この映画を観たのは30年以上前のことだが、なるほど学生映画ではありがちな設定と思いながら、この試みは商業用映画では殆どお目にかかった事はないなと感じたのを覚えている。映画は自分が癌なのではないかと疑っている新人歌手のクリオが主治医に検査の結果を聞きに行く前の2時間の行動と心の動きを描いている。冒頭のパート・カラー部分の占い師が出すタロットカードの絵柄がどれも毒々しくクレオのみならず観る者も彼女の行く末を感じずにはいられないが、映画は過度に感情に流れることなく、彼女が結果を聞くまでの彼女が出会った恋人、レッスン教師、友人、声を掛けた男性との会話の数々を追い、さらにその2時間の間に彼女が目にし体験した街並みの風景やカフェでの出来事を目撃し続けることで彼女の心の揺らめきを感じ取る。ある意味記録映画のような感覚なのだが、もし自分が同じ立場であったらと想像を思い巡らすことで物の見方も違ってくるし新たな発見がある。淡々とした描写の中にも女性らしい繊細さに溢れた作品でもある。正直、初見時は、彼女は人生の大きな分岐点になるような状況下で短い時間に様々な行動に移しすぎと思っていたが、今、観ると、まるで気にならない。平穏ではなく不安に駆られる時だからこそ、人間は人々との繋がりや関わり合い、物事を観る目を潜在的に見つめ直そうとするものだろうから。コリンヌ・マルシャンはジャック・ドミーの「ローラ」で踊り子の役を演じてヴァルダの目に止まったようだが、モノクロのパリの街並みによく似合って可憐。特にウイッグを取り黒のドレスにサングラスで決めた姿は目を見張るほどで、晴れない彼女の心とは裏腹に賑やかで心弾むパリの街並みも一層魅力的に映る。ヌーベルヴァーグ左岸派ヴァルダの長編劇映画処女作、低予算ゆえ撮影はパリ市街のみ、衣装や小道具も極力減らす為に主人公の僅か2時間を切り取る筋立てにしたとの事だが、それを見事に逆手にとった感覚、今観ても古さを感じないし洒落ている。クレオにレッスンをつける作曲家に若き日のミシェル・ルグラン。4年前だったか、ブルーノートでルグランのライヴを最前列で聴いたが、今、自分は“歴史”を体感していると感じたものだ。
コ**ロ
同じ時間で共有する変化と成長 ~1961年のパリも魅力的
この作品はフェミニストのアニエス・ヴァルダのヌーベル・ヴァーグ作品であり、映画のジェンダー史を語る中でも重要な作品の一つだ。クレオは歌手で癌の精密検診を受けて7時にその結果を知ることになる女性歌手。前半クレオは恋人が病気のことを察してくれないとか、作曲家のボブの演奏にノリに乗ると思ったら突然機嫌が悪くなったり、とにかく情緒不安定。人が自分をどう見てくれるかで心が揺れていて常に受け身。そんなクレオの精神状態をヴァルダ監督は鏡に映るクレオをところどころに挿入することで表すところが素晴らしい。後半、受け身でいる自分がばかばかしくなり、人形のような可愛いいでたちを変えてお気に入りのおしゃれウィッグもはずし、黒のシンプルなワンピースで外に飛び出す。それからのクレオは一気に変貌していく。街で自分の存在をそれとなく主張してみたり、友人を訪ねて病気のことを話してみたり、公園で兵士と語りあったりと能動的になっていく。そして、検査結果を能動的に受け入れようとしていく。そんな変化がたのもしくなっていく。なんの癌(お腹としか)かは語られないが、女性特有の癌の可能性も大きく、そんなところからジェンダーを表現した作品に位置付けられているのだろう。しかし、深刻なテーマでありながらユーモアを交えた展開やミッシェル・ルグランの楽曲やパリの街をストーリーと同じ時間通りに映していく展開が魅力的であり、クレオの憂鬱、変化や成長を観る者が深刻にならず共有できる。そこがこの作品の大きな魅力だ。今は観ることができない1961年のパリの街なみも素晴らしい。コリンヌ・マルシャンもクレオ役にバッチリあっている。クレオが唄うルグランの楽曲も最高だし、クレオが覗く無声映画も楽しい。カメラワークの妙もありまったく飽きずに最後まで楽しめる傑作だ。BDとしても画質はまずまず。特典映像のヴァルダ監督のインタビューは短く普通だった。
時**楽
昭和のボクたちは、これを低画質で観るのに「税込3990円のVHSビデオ」を買うしかなかった
【※本レヴューは商品の新品売価が \899だった時点で記したものです】いや、この値段は(間違いなく)安すぎ!でしょう。いわゆる「激安」、叩き売り状態です。添付画像の通り、自分はVHS媒体でスタンダード画質(ぶっちゃけ、低画質)版を書店で(=すなわち値引きゼロの定価販売:3990円で)購入。大事に蒐蔵してきました。が今回、「クッキリはっきり見えすぎるまでの」HD画質へリマスタリングされたってのに、「どんだけ」安いんですか??? この破格ぶり、信じられません。画質の目くるめき改善ぶりは映画冒頭、占いのマダムが机上にタロットカードを並べ始める時点で「厳然として」明らか。明瞭にしてクリア、輪郭もシャープに映りすぎてます。これだけ贅沢な"絶品画質"に、千円の代金すら支払わないなんて、とても罰当たりな想いがします。もっとも、本当に映画の公開された1961年時点、当時の映画館のスクリーンで観られたであろう本作は、このDVD品質よりは(解像度の劣悪な)VHS品質に近かったろう、とも信ずるワケで。それゆえ「ただクリア画質に洗って観るだけが、20世紀映像作品を味わう愉しみの肝(きも)じゃ ないんだよ!」と、今どきの若者らに諭してあげたい自分も健在。本当に「ヌーヴェル・ヴァーグ道」を究めたいのなら、デジタル細工によるリマスタ前のVHS、同リマスタ後のDVD、両バージョンともに(つまりは再生機器たるVHSデッキも含め)所有すべきなのでしょう。ことアート界においても、過去の開拓者に対するリスペクトとは一面、そういう謙虚な姿勢にこそ示されるモノです。
W**R
これもヌーヴェル・ヴァーグの傑作の1本
ヌーヴェル・ヴァーグというと、ゴダール、トリュフォー、マルあたりを思い浮かべるけれど、セーヌ川「左岸派」のアニエス・ヴァルダも知的で素敵。ヴァルダの代表作のひとつがDVD化されて、嬉しい。
こ**た
大好き?
私のオールタイムベストの1つです。大好きな映画です。
Trustpilot
2 weeks ago
1 month ago